e-manage Ultimate-で旧規格軽(ダイハツ・ミラ)の点火時期を弄れるように

 ダイハツの古いミラを2台所有しています。(L200S改&L500V改)
 型番に(改)が付いてるのは、二台とも元々の3気筒EFエンジンから、4気筒JBに換装してあるからです。勿論、構造変更で車検をとってある、所謂・公認魔改造車です。ナンバーもちゃんと付いてるので、堂々と公道も走れます。


*下が愛車の写真です*

e-manage Ultimate- e-manage Ultimate-

 こいつらにTRUSTのe-manage Ultimate(サブコン)を付けて、ECUのセッティングをやろうと思うわけですが……。しかし販売元のメーカーTRUSTが、上の車種に載せたエンジンのECUには非適合を謳うだけあって、点火時期の補正は中々巧くいかず。……
 要するにe-manage Ultimateは、ダイハツエンジンではEF-DETとダイレクト点火式のJB-DETにしか適合しないわけでして。

 ここは、メーカー適合保障外のダイハツECUの点火時期を、無理矢理e-manage Ultimateで補正する為の努力と研究の記録(想い出とも)のページです。

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先ずは、TRUST e-manage Ultimateってなに? て基本的なとこから。
で、なんでJB-DET後期は適合するのに同じ4気筒でもJB-JL/ELはダメなのか? を考える。
悲報・駄目、絶対、付けたら壊れます!!
そして、箱の蓋を開けたら、大体判った。

先ずは、TRUST e-manage Ultimateってなに? て基本的なとこから。

TRUST e-manage Ultimateを楽天市場で見てみる

 e-manageってのは一言でいっちゃえば、サブコンです。
 元々のECUのROMに書き込まれている、純正の燃調MAPや点火時期MAPを参考にして、それを補正する事が出来ます。
 そうする事によって、元来のメーカーの燃調MAPや点火時期MAPというのは安全マージンが大きくてそれ故にエンジンの出力がセーブされている部分があるので、ハード面をまったくなーんも弄ってなくても、ソフト面であるROMのデータを補正するだけでも馬力が上がったりします。俗にいう、コンピューターチューンという奴ですかね。
 有名な話で、JB-DETエンジン搭載の旧・コペンのECUを64馬力縛りのある国内用から制約のない海外輸出用に交換するだけで馬力が64→80にアップするってのがあるんですが、e-manageを使用してMAP補正をしても同じようなチューニングになるわけですね。要はリミッターカット的なパワーアップでしょうか。
 まあ尤も、TRUST推奨のそもそものe-manageの使い道は、エアクリ交換やマフラー交換という後付パーツを使用したことで少なからず崩れるであろうエンジンの燃料調整のバランスを再度ベストな状態に戻す為の製品みたいですが。
 因みにe-manageには通称・青マネと呼ばれる無印と、通称・黒マネ又は銀マネと呼ばれる上位機種のe-manage Ultimateがあります。
 2者の違いを大雑把にいうと、青マネは『純正エアフロメーターや圧力センサーの信号を補正して燃調を補正するエアフロ補正コントローラー』だけど、これが黒マネだと+αで『インジェクター信号その物の補正が可能となり、因って大幅な増量減量が自在』になると思っておけばいいんではないでしょうか。
 所謂ライトチューンで、エンジン内部には手を入れておらずで使用しているのがノーマルインジェクターの場合であれば、青マネでの燃調MAPや点火時期MAPの補正でまあ大丈夫なんですが、これがエンジン内部に手を入れてインジェクターを社外品の大容量品に交換している場合、アイドリング状態等の低回転時にはインジェクターの吐出量が多過ぎて、意図的にかなり絞り込まないと燃料が濃過ぎて大変なことになりますので、そうなるとインジェクターの吐出量自体をマイナス方向へのコントロールが必要で、それが出来ないとお話になりませんので、e-manage Ultimateが必須になります。
 青マネの場合は、飽く迄も純正エアフロ電圧を誤魔化してECUを騙して燃調をコントロールしているだけで、インジェクターその物を制御しているわけではないので、大容量インジェクターに交換した場合は青マネでは対応がおっつきません。役者が不足なわけですね。
 家のミラの場合、L200S改の方は現時点ではまだノーマルインジェクターなのですが、L500V改の方はエンジン内部に手を入れてピストン&コンロッドをダイハツがラリー用に開発したx4(ミラやストーリア)用の耐久性の高い鋳造品に交換、エンジン内部がノーマルに比べて高ブーストに耐えられるようになるのでそれに伴いタービンも容量の大きいVQ30に交換、前記に対応する燃料増量の為に更に同時に燃料ポンプとインジェクター共にSARD製の大容量(インジェクターは300cc)の物に交換しているので、インジェクター吐出量制御に黒マネ(e-manage Ultimate)を導入しました。
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で、なんでJB-DET後期は適合するのに同じ4気筒でもJB-JL/ELはダメなのか? を考える。

 TRUSTのHPのe-manage Ultimateの車種適合表を見え貰えば判るが、ダイハツ車のミラで表に載っているのはEF-DETのミラAVYだけである。
 そこにL500系のミラの名前はない。詰まるところ、ダイハツ初の4気筒エンジンのJB-JL/ELの名前その物がない。
 これはどういうことなのだろうかと悩んだ。この時点で考えられる事は2つだった。

 その1 端に古い車のエンジンなのでTRUSTがJB-JL/ELの適合テストをしていないので載せてない。
 その2 JB-DETとJB-JL/ELとでは何か決定的な違いがあり適合しない。

 L500系のミラなんて残存数がそんなにあるわけでないのでテストしても誰も買わないだろう、みたいな感じで、その2が理由のような気がしてTRUSTにその真相は如何なるものか、問い合わせしてみることにした。
 すると、流石ユーザーサポートの親切さには定評があるTRUSTさんだけあって、問い合わせたら直ぐに、e-manage接続用の車種専用ハーネスが存在しないL502(JBエンジン搭載車)ECUの為に、純正カプラーのピンデータの詳細(整備マニュアルからの転記)と共に大体『うちでは現車がないのでチェックしてないので繋ぐんなら自己責任でお願いします』みたいな内容の返答があった。
 その結果に、ああやっぱり適合のテストをしていないだけだったか! と楽天的な予想が的中したことに気を好くして、それではと早速マイL500V改のECUのカプラーに繋がる配線をぶちぶちと切ってキボシを取り付けて、e-manage Ultimateの汎用ハーネスと接続出来るようにと配線に加工を始めたのだが……。しかし、そこで思わぬ落とし穴的な急展開が訪れるのであった。
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e-manage Ultimate-

悲報・駄目、絶対、付けたら壊れます!!

 よし行ける、と一人心浮かれていると、TRUSTより至急扱いのFAXが到着しました。
 内容的には『問合せの時に対応した事務所の者が確認する配線図の車種を見間違えていた。L502は点火制御不可です。点火信号の線を配線してしまうとe-manage Ultimateが壊れます』大体そんな感じ。
 なんと、JB-JL/ELのECUでは、e-manage Ultimateで点火信号の補正、点火時期の進角遅角が出来ないらしかった。いや、出来ない以前に繋げたら壊れるらしいので、補正云々の話までもいかない。
 それは痛い。デスピの頃、点火時期の調整したことある人なら判ると思うが、点火時期を微妙に早める遅らすは、エンジンフィーリングの調整に、かなり有効である。それが出来ないとは、痛恨である。
 とはいえ、点火信号以外の、インジェクター制御による燃調等は可能であるのが救いといえば救いか。
 取り敢えず、交換した大容量のインジェクターの燃料噴射をマイナス方向に絞らないといけないので、どの道e-manage Ultimateは必要であるので、点火信号以外のその他の部分の接続は進める。
 だがしかし、何故に点火信号は接続不可なのか。そこの部分をTRUSTに詳しく訊いてみるも、どうもTRUSTはe-manageの設計や製造は完全に外注任せらしく、TRUSTの担当者もメカニカルな仕様的部分にはまったく詳しくなく何故駄目なのかの理由に付いては皆目理解していないらしい。
 しかし解せない。TRUSTの適合車種表には『点火信号アダプタ2が必要』の注釈があるものの、JB-DET搭載のL902ムーヴ98.10〜02.09が書かれているのだ。
 ムーヴのJB-DETは点火方式に、前期2コイル式と後期4コイルダイレクト式の違いがある。前期の2コイル式は基本的にはJB-JLベースなので仕様そのものはJB-JLに近く、両者で異なるセンサー類を交換さえすればJB-JLのECUでもJB-DETを接続出来るし勿論制御も出来るのである。後期は、コペンと同じなので、これはコペンのECUが使えたりする。
 なので、初期のムーヴのJB-DETがe-manage Ultimateに適合しているのなら、JB-JLだって使えそうなものなのだが。……この辺が未だによく判らない。もしかすると、TRUSTの誤植? とかを勘ぐってしまう。
 因みに、我が家のL500V改は、旧規格だが新規格のJB-DETを載せてある。尤も、ハーネスは元々JB-JL搭載のL502の物を移植してあるので、ECUはJB-JLではあるのだが。
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そして、箱の蓋を開けたら、大体判った。

 訳が判らないので点火時期は取り敢えず保留。しかし他の部分だけは接続して、点火時期はノーマルのままで燃調をとっていくと、L500V改はなんというか、JB-JLとは次元の違う物凄い別の何かになった。
 軽とは思えない低速トルク、加速、馬力、……今の、いや各メーカーが挙って馬力戦争をしていたあの頃の当時の純正でも比較にならないくらい、喩えるならPC88mk2SRとPC98RAくらいの差、スーパーカセットビジョンとメガドライブくらいの違いのあるものになった。それくらいいいエンジンになった。いやあ、ダイハツのJB-DETにVQ30タービンの組合わせ凄い、ホント凄過ぎでした。
 点火時期はノーマルでそれなので、これはもう絶対に点火時期も何とかして補正して更なる上のレベルを体感したくなりました。人間の欲にはきりがないのです。
 そんな訳でe-manage Ultimateに点火信号も繋ぐ方法を考えるべく、ECUの蓋を開けてブラックボックスの中を覗くことにしました。
 そして、そこで垣間見た衝撃の真事実(ちと大袈裟w)とは……。

e-manage Ultimate-

 成る程、ECUのカプラーから出ている点火信号をe-manage Ultimateに繋ぐとe-manage Ultimate壊れるという理由が判りました。
 それはECUの中にイグナイタ内蔵されているからのようでした。……orz
 そりゃまあ、イグナイターの後から出ている電圧増幅された信号を入力したら、壊れますよねe-manage Ultimate。
 因みに、写真上部中央に2個あるTO3パッケージの黒いパワートランジスタET424、これがL502系JBエンジン搭載ミラのイグナイタです。
 なんでこれがイグナイタだと判ったのかというと、ECUカプラーの点火信号ピンにトランジスタのE(エミッタ)の脚が繋がってるので、ああこれか、みたいな。
 で、Webにてこの型番で情報拾ってみると、以下のようなデータシート、

品名: ET424
材料: Si
種類: NPN
コレクタ損失 (Pc): 125
コレクタ・ベース間電圧 (Ucb): 700
コレクタ・エミッタ間電圧 (Uce): 500
エミッタ・ベース間電圧 (Ueb): 0
コレクタ電流(直流) (Ic): 7
接合部温度 (Tj): 175
利得帯域幅積 (ft): 2.5
出力容量 (Cc), pF:
直流電流増幅率 (hfe): 30
パッケージ: TO3

 が、見付かったりしました。序に、哀しいことに既にこのトランジスタは廃盤みたいなので、壊れても交換用の部品は入手絶望的ということも判ったりしました。まあその時は、似たような特性の代替トランジスタを探せばいいような気がしますが。
 このET424は、L502ミラJBだけではなく、この当時の他の車、L200ミラのEF-JLや、L500後期のEF-RL、他メーカーではスズキのK6A型エンジンのECUや、スバルのスーパーチャージャー付ヴィヴィオのECUにも、内蔵イグナイターとして使用されていたみたいです。
 その後、Webで更なる情報収集をし、自分でも基板の裏表の配線を拾ったりをして、といったちまちました作業を経て、L502ミラJB-JL/EL系からe-manage Ultimateに接続して点火信号を入力して点火時期に補正をかけた物を再びECUに戻すには、このECUの基板内部から直接点火信号を取り出すしかないか、という結果に辿り着きました。
 写真やや右側に、R501、R507という小さめの20Ωの抵抗が2本映っていると思いますが、この抵抗を基板から外して、そこに代わりに点火信号のin/Out用に使うリード線を下の写真みたいな感じで取り付けてECUの箱から外に出せし、これにe-manage Ultimate接続すれば、やっと晴れて点火時期を弄れるようになる訳です。

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 いやあ、これで一応めでたしめでたし……なのかな?
 実はWebを探してみると、ET424使用のECUで同じことしてる人が他にも結構居たりします。皆さん、やはりそこまでしてでも点火時期を弄りたいのですね。判ります。
 さて外部に取り出した線にオシロスコープを繋いで信号パルスを計測すると、無事にちゃんと点火信号は出力されていました。(まあここまでして、信号出力されてなきゃ、洒落になりませんけどね)
 因みにパルスの幅は-3V〜1.2Vp-pくらいでした。トランジスタをOnOffするには充分ですが、電気回路の入力信号用だとちょっと電圧が低めで心許ないですが、今回の場合、無事に取り出せただけでGoodでしょう。

e-manage Ultimate-
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関連HP
車弄りの為のオシロスコープ

2014/11/23設置・2014/12/05最終更新